アナグマでラーメンをつくった男が語る「野生の食材を受け入れることの大変さ」《公式》



大塚和成です!!

11/17(土) 16:00配信 週刊SPA!

アナグマでラーメンをつくった男が語る「野生の食材を受け入れることの大変さ」

食料も建築資材もできる限り野山で調達するというカメ五郎氏。木の実は簡単に手に入る食材だ

 ナイフなど最小限の装備で山に入り生活するブッシュクラフトを日本で実践する数少ないサバイバリスト、カメ五郎氏。カメ五郎氏は山での暮らしや自然の中での生き方を撮り下ろし、動画で配信するYouTuberでもある。そのチャンネル「ネイチャーポケット」はチャンネル登録者数9万人を超える人気チャンネルだ。今回はそんなカメ五郎氏に野生の食材の味について話を聞いた。

 まず聞いたのは、Youtubeで視聴者の度肝を抜いたアナグマを使った料理。肉は焼き、骨と脂で取ったスープをカメ五郎氏はなんと、ラーメンにしてしまったのだった。

「いつもは猟のメインは鹿なんですが、あるときアナグマをもらったんです。なんとか骨を利用したいなって思ったときに、豚骨みたいに骨から出汁とろうと思って。で、スープに仕立てるんだったら、ラーメンにしたほうがいいんじゃないかと。ほんとに思いつきなんで。最初はテールスープみたいな感じでしたが、スープはいつも作っているし、それだったらいろんな調理機材を使ってとことん調理してやろうかなと。今までやりたかったけどできなかったことをやってしまおうと」

 もちろん麺も自然界から調達することに……。

「どんぐりを粉にして、つなぎにクサガメの卵を使ったんです。前にメスの亀を捕まえて、お腹を開けたら卵があって、何かに使えるかもしれないと思って、冷凍保存していたんですよ。今こそ、それを使うときだ!って。でも、これがたいして、つながらなかったんですけどね(苦笑)」

 気になるのはその味だ。果たしてどんな味のラーメンができあがったのだろうか。

「麺は、最低でしたね(苦笑)。甘みがすごくて、この甘さが邪魔で、スイーツみたいになってしまって……。麺は甘いのに、スープはラーメン仕立てにしたから、味がケンカしちゃったんですよ。スープはどちらかというと豚骨ラーメンに近い感じでしょうか。だからどんぐりの甘さ、味は栗に近いものがあって、スイーツみたいなんですよね。合うわけがない。でも、後日自宅に持って帰って、既成品の即席の乾麺で食べたら、ものすごく旨かった。アナグマの優秀さを実感しましたね。アナグマに罪はありません。マズく作ってしまった僕に罪がある(笑)」

 ジビエ料理が近年ブームになっているとは言え、アナグマでラーメンを作るとはもはや常人の考えの斜め上を行くとしか思えない。カメ五郎氏にとって、手に入る食材を使い切ることは、命への感謝という行為に繋がるのだろう。

 食べられるものは食べるという行為は、サバイバルでは鉄則。だが、常に獣肉が手に入るとは限らないそのため、手っ取り早く手に入る栄養源として、昆虫は貴重な食料となる。一般の人なら触れることすら恐れるクモや毛虫も、彼にとっては立派な食料だ。

「毛虫は焚火で炙り、焼いてから食べます。僕らの食生活の中で、毛がある食材を毛がついたまま食べたりしませんよね。だから毛さえ除去してしまえば大抵イケます。所詮はたんぱく質ですからね(笑)。クモは美味しいですよ。カニみたいな味がしますから。でもクワガタムシの幼虫やコガネムシはおいしくないんですよね……。やり方次第ではおいしくなるかもしれませんが、火を入れるだけでは食感も味も悪いんですよ」

 基本的に火を通せば食べられると語るカメ五郎氏。しかし焼いたところで、やはり虫は虫である。味覚的な抵抗もあるだろうが、視覚的な抵抗はないのだろうか……。

「よし、食べるぞ!ってときに抵抗があるだけです。要は固定観念ですよね。外国の先住民の方とかは、それが貴重な食料だったわけで。僕らの生活の中にそういったものが入ってなかったから、いざそういうものを食べる時にすごい拒否感がある。納豆なんて外国からしたらとんでもない食い物だったわけですからね」

 虫を食べるという非日常。その“初めて”を乗り越えると日常となり、貴重な食料へと変化を遂げるとカメ五郎氏は語る。

◆スッポンの生き血で生死をさまよう

「食べられるものがあるだけありがたい」と語る彼だが、口にするためには「確定的な事実が必要」だという。要するに安全性である。スッポンを食べて食中毒になった“痛い過去”を語ってくれた。

「スッポンを食べて食中毒になったのは生き血が原因でした。症状は食事が終わって1、2時間後に蕁麻疹が現れたんです。そのときは多摩川の河川敷で野宿していたので、何かしらの虫に刺されたんだろうって思ってたんですが……。でも帰宅するとそれがどんどん広がって、最終的には発熱。幸いにも2日寝込んだら治りましたが、あれは無謀だったと思います。料亭とかでスッポンの生き血を飲んだりするじゃないですか。でも、あのときの自分は『生き血は飲める』ってことを知っていたけど、安全面などの知識は皆無。血は飲めるという、ただそれだけの知識のみで飲んじゃったんですよ。つまり私はこのとき、安全に生き血を飲むにはどうしたらいいのかという確定的な事実が出来上がっていないのに、口に含んでしまったということです。最近、イワナの生食をする方がいますが、あれだって安全面の確定的な事実は出来上がっていません。むしろ寄生虫などのリスクがあることから、避けるべきというのが確定的な事実だと私は思います」

 山の中で生き抜くためには、失敗は許されない。1つの失敗が生死を分けることは珍しくはないのだ。たまたまこの亀の生き血事件の際は自宅で療養することができたが、これがもし、山の中であったら生死に関わっていたかもしれないのである。

 これから秋の行楽シーズンが本格的に到来して、山に出かける人も多いだろう。キノコ、山菜、魚や獣など山は自然の恵みで溢れている。だが、その恵みをおいしく、そして安全に受け入れるためには、素人考えは厳禁。常に注意を払って少しでも危険と思ったら手を出さないことが、生き抜くためには必要なのである。

【カメ五郎】

サバイバリスト。最小限の装備で山に入り、現地で調達したもので小屋を建て、罠を仕掛けるなどして狩猟をするいわゆるブッシュクラフトを実践する。その模様を撮影したyoutubeチャンネル『【カメ五郎】ネイチャー・ポケット』は10万人を超える登録者数を誇る。また、アウトドア雑誌『Fielder』においてもコラムを好評連載中。

構成/森田光貴、長谷川大祐(SPA!本誌) 写真提供/Fielder

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